8月1日のニュース

雑記──よい文章

谷崎純一郎は『文章読本』の中で

 文章のコツ、即ち人に「分からせる」やうに書く秘訣は、言葉や文字で表現できることとできないこととの限界を知り、その限界内に止まることが第一でありまして、古の名文家と云われる人は皆その心得を持つてゐました。

といっているが名言というものであろう。その気になれば文章というやつはついつい滑ってしまうもので(文章に限った話でもないが)思ってもいないことを書いたり、ついついどこかで見たような定型文を使ってしまいがちである。たとえばこの作品は面白いと思っても、どう褒めて良いのか分からずに適当に「キャラクターが面白い」とか「なんかそれっぽいこと」を書こうとする。

しかし、それは当然思ってもいないこと、無理やりひねくり出した借り物の言葉なのだから何も伝えていないのである。

文章というやつはまったくもって不完全な物で、相手に意図を完全に伝えることなど土台不可能である。それなのに万能だ、と慢心せずに自分の文章は相手にどこまで自分の意図を伝えられるかを正確に知り、その範囲内で最善を尽くすのが、不完全な文章というものの良い在り方なのだろうと思った。