8月10日のニュース

引用コーナー

『熊を放つ』より

「でもね、俺はちゃんと一線を画すんだよ、グラフ。要はそういうことなんだ」。そして彼はオートバイのエンジンをかけはじめた。
「ずいぶんご大層なもんだな」と僕は言った。「そんなに悪かなかったって言ったらどうする? ぜんぜん悪くなかったぜ」
「さもありなんってとこだね、グラフ。美しさに比べれば技巧というのはありふれたものだからさ」。

この引用コーナーって完全に僕個人がおもしろかったものを引用しているので読んでいる人からしたら意味不明なのかもしれない。上のやり取りはグラフと呼ばれる男とジギーと呼ばれる男が旅をしていて、ふとっちょとがりがりの女の子とデートしたときの会話である。ジギーはふとっちょから逃げ出し、グラフはふとっちょの女の子を押し付けられヤってしまった。僕が気に入ったのは「俺はちゃんと一線を画すんだよ、グラフ。要はそういうことなんだ」と「美しさに比べれば技巧というのはありふれたものだからさ」という一貫して上から目線のジギーの台詞である。そのような言い草はあまりにも相手の女の子に失礼だと僕は思うがなるほど確かに美しさに比べれば技巧というのはありふれたものかもしれない。技巧というのはある一定の水準までなら誰もが到達できるものだからだ。一方で美しさ(あくまでも人間的な)というものは生まれ持った物によるところが大きい。まあそれはそうなのだがやっぱり女の子に失礼だし、そもそもその言い草は逃げて友人に押し付けた上で友人に言うような台詞じゃない。そう考えると若さ故の強がりというか皮肉屋な側面が見える。人間的な浅はかさとか、台詞のリズムとか、結構気に入ったところが多かったので引用してみたのだ。こうやって結構適当に引用される文章は選ばれている。